これは人災です!
当院の患者さんのお知り合いの犬(ダルメシアン)が、釣り針を飲み込んでしまったとの連絡が。
かかりつけの病院では、レントゲンで喉のところに釣り針があるのは確認できたが内視鏡などがなく対応できないとのことで、なんと千葉の館山から当院までこられました。
口からは針につながったテグスが・・・。
針がどこにあるのか、こちらまでの移動中に状況に変化がなかったか確認するためにも改めてレントゲンを撮影。
(顎の辺りのものは口輪の金具です)
口を開ければ見えそうな位置にも思えますが・・・。
麻酔をかけてチェックしますが、やはりそのままでは見えません。
なので予定通り内視鏡を使って探します。
そうすると、本当に食道の入り口すぐのところに引っかかっていました。
この位置がなかなか曲者で、内視鏡を通して鉗子(つかむための道具)を挿入してみるのですが、釣り針を確認して鉗子でつかむために少し内視鏡を手前に引くと食道の入り口から出てしまうし、かといって奥に行くとすぐに針の場所を通り越してしまい、見えなくなってしまいます。
引いたり押したりしながら食道自体をたぐり寄せるようにして、どうにか目視できる位置まで針が出てきました。
内視鏡をカメラと照明替わりにしながら、直接針をつまんでみますが、返しが引っかかって簡単には取れません。
しばらく頑張りましたがどうにも取れないため、指先で針が引っかかった部分をよく探索して、最も食道へのダメージが少ないと思われる部分の粘膜をメスで少し切開し針を取り出しました。
取り出した針。
2cmほどもある大きな釣り針です。
悪戦苦闘の末、今回は無事に取り出すことができましたが、もう少し奥で返しが引っかかって抜けなければ、頚部の切開が必要だったかもしれません。そうなればかなり難しい大手術になる可能性もあります。
これは明らかな、人災です!!!!
釣りをした人が、針のついたテグスを海岸沿いに無造作に捨ててしまった為に起こった事故です。
渡り鳥の脚にテグスが絡まってしまったり、おもりの鉛を飲み込んで中毒になってしまうなど、すべて人が原因の人災です。
釣りそのものを否定する気持ちは毛頭ありませんが、釣りをする時点で生き物を捕ることを楽しんでいるのですから、マナーを守らずさらに他の生き物にまで危害を与えないで欲しいものです。
この犬の飼い主さんもいつも海岸沿いを散歩しながらゴミ拾いをしているとおっしゃっていました。
最近は釣りブームで人も増え、ゴミも増えたと嘆いていました。
みんなが安心して犬の散歩ができるようになってほしいものです。