腸閉塞ーウサギ編
草食動物であるウサギは、牛などがいつも口を動かしてくちゃくちゃしているのと同じく、絶えず胃腸が動いているような状態が正常です。
手軽に給与できるペレットを主食としているウサギの場合、物理的な刺激が少ないため胃腸運動の低下による食欲不振が起きることがあります。
今回のRちゃんは丸1日、ウンチが出ていないとのことで病院に来られました。
触診で、張りのある胃が触れます。
ウサギの消化管鬱滞(うったい)は、通常かなりのケースでは内科的治療(投薬や注射)によく反応してくれます。
今回も、比較的早い受診だったことからまずは内科治療を提案しました。
ところが、翌日になっても排便が全くないとのことで朝一番で再診。
こうなると、緊急性が一気に高くなります。状態の悪化も見られたため、外科的介入を提案しました。しかし、ウサギの消化管鬱滞で外科的介入を必要とする状態では、手術をしても助からない可能性も低くありません。
すぐに点滴をして、手術に備えました。
午前の外来を終えて手術に望みます。
開腹してみると、
パンパンになった胃が見えます。
慎重に切開を加え、内容物を除去します。胃粘膜には点状の出血が見られます。
胃内の毛の絡まったペレットの残渣を取り出し、まず縫合。
その後、腸管をたどっていくと、胃からすぐの十二指腸に閉塞部位が見つかりました。
切開すると、固くなった毛玉がでてきました。
詰まっていた毛玉です。
洗浄などをしたあと閉腹し、点滴と保温を続けて回復を待ちました。
さすがに、当日はぐったりしていましたが、翌日のお昼ごろからは威嚇してくるほど元気になりました。処置にも困るほど…。通常、流動食などからスタートしたいところですが、とてもそんなことをさせてくれそうにないので、大好物だというセロリなどの生野菜を少し与えて様子を見ます。
体調が良くなると、ウサギにとっては入院が最もストレスと思われるため、手術の2日後には退院となりました。
ウサギは犬や猫に比べると、麻酔のリスクがどうしても高くなります。
当院でも、通常ウサギの外科手術は緊急時以外はお受けしていません。
今回は無事助けることができましたが、同じような状態での回復率は厳しい見方をすると、50%程度かもしれません。
この子は、以前にも毛球症と診断され内科的治療でよくなった経歴がありました。
一般的には「毛球症」という呼び方が使われていますが、実際は摂取した毛そのものが原因であるとははっきりとは分かっていません。どちらかというと食事内容などにより腸そのものの動きが悪くなり、そこに毛玉が関与して二次的に悪化させる要因になっていると考えられています。
今回、Rちゃんは腸閉塞まで起こしてしまったため、今後は食事管理が重要になります。
ウサギの主食は牧草です。ペレットはもともと実験動物としてのウサギの管理のために開発されたもので、ペットのように5年以上の寿命を考えられてはいません。
あくまでも主食はイネ科の牧草とし、栄養補充のために少量のペレットを与えるような食事管理がおすすめです。