短頭種気道症候群
短頭種気道症候群というのをご存知でしょうか。
ブルドッグやパグなどに代表される鼻ぺちゃの犬種を「短頭種」と呼びます。
これらの犬に見られる、
・外鼻腔狭窄(がいびくうきょうさく)
=鼻の穴がほぼ塞がった状態
・軟口蓋過長(なんこうがいかちょう)
=喉の近くにある鼻と口を隔てる蓋状の組織が長すぎる
・咽頭部組織の過剰
=太い舌根部や大きな扁桃
などが原因で起きる、呼吸機能の異常を起こす病態です。
症状としては、
・いびきおよびいびき様呼吸
・開口呼吸
・吸気時の呼吸困難
などで、これらの結果として、呼吸困難に陥りやすくなります。
短頭種は、頭蓋骨が前後方向に短いのに対して、軟部組織(舌や、口の中の粘膜などの柔らかい部分)は一般的な犬と同じように発達しているため、相対的に軟部組織の量が増えます。
そのため、太い舌根や、軟口蓋過長といった特徴が現れます。
これらのことから、息を吸う時に負荷がかかりそのままで過ごしていると、徐々に進行し、喉頭虚脱や気管虚脱といったやっかいな病態に変化していくことがあります。
そのため、なるべく早い時期に外科的治療することが推奨されています。
今回、ボストンテリアのワンちゃんで外科的な治療を行いました。
慢性のいびき様呼吸と原因不明の失神様発作を起こしたため、飼い主さんとご相談の上、鼻翼切除と軟口蓋切除を実施しました。
手術前の鼻の状態。
縦穴がほとんどありません。
手術後
上の写真と比べて、かなり鼻の穴がひろがりました。
こちらは手術前の軟口蓋という部分。
器具で摘んでいるのが軟口蓋。
本来、こんなに引っ張ってこれるほど長くはありません。
この部分を切除して溶ける糸で縫合します。
手術から10日ほどして飼い主さんに伺うと、いびき様の呼吸音がかなり小さくなったのと、日常生活においても明らかに楽そうになっているとのことでした。
失神のようなものも起きていないということで、一安心です。
(※失神に関しては呼吸困難によるものかどうか、引き続き観察していく必要がありますが。)
文献上では、早期に外科的治療を行うほど、改善率が高いようです。
手術自体は難しいことはないのですが、呼吸に関する部分を触るため、麻酔導入・覚醒時には神経を使います。特に術後の浮腫(むくみ)に注意して、1-2日入院してもらっています。
短頭種を飼われていて、呼吸が苦しそうと感じられている場合は、お早めにご相談ください。