肥満細胞腫〜陰嚢部
睾丸の皮膚に何かできものがあるとのことでいらっしゃった、12歳のフレンチブル。
見てみると、たしかに私の親指の頭ぐらいのできものができています。
一見すると、怪我をした後のようにも見えますが、触ってみると確かに”しこり“があります。
体表に出来たできものは、まず針をさす”細胞診“検査をしてみて、そのしこりの中にどんな細胞が集まっているのかを確認するのがセオリーです。
この検査は通常麻酔などの必要はなく、動物にも負担をかけません。
細胞診をしてみたところ、
(ちょっとピンぼけですいません)
とても特徴的な細胞が採れてきました。
青紫色の小さい顆粒がたくさん含まれた細胞が見えます。
こういう細胞がとれた場合、この段階でほぼ確定診断ができます。
「肥満細胞腫」
という皮膚にできる悪性腫瘍(あくせいしゅよう)の中では、もっとも遭遇するものです。
これぐらいの大きさで単発のものであれば、周りの皮膚と皮膚の下の組織も少し大きめに切除することで対応します。
場所が場所だけに、同時に去勢手術も行うことにしました。
通常の去勢手術では陰嚢(睾丸が入った袋の部分)は切除しませんが、今回は陰嚢ごと切除しました。
切除した陰嚢と睾丸は病理検査にまわして、腫瘍細胞の広がりを検索します。結果によって、今後の治療方針を決定する必要があるためです。
この子の場合は、幸い肥満細胞腫は切除した部分内にとどまっており、周囲への広がりは無いことが確認されました。
当然、再発や別の場所への発生の可能性はあるため、飼い主様には今後も同じようなできものが出来ていないか、観察していただくことになりました。
体表にできたしこりの検査は、大きな負担をかけず病院内ですぐに検査が可能です。
「痛がってないから大丈夫と思って・・・・」
こう言われることが多いのですが、むしろ腫瘍の場合は痛みを伴うことは少ないです。
痛みを伴う場合は腫瘍より、炎症性のものが多い(たとえば、にきびのようなもの)ため、痛みの有無で判断することはできません。
今回のようにすぐに判断可能な場合と、細胞を病理専門医に判断してもらわなければならない場合もありますが、しこりの種類によっては早めの対応が必要なものもあるため、気になるしこりを見つけたら、まずは動物病院までご相談ください。