巨大乳腺腫瘍ー前編

日々の診察の中でも最も遭遇する機会が多いと思われる腫瘍(いわゆるガン)に、乳腺腫瘍があります。
教科書的には、雌犬10万匹あたり200匹程度、つまり500匹に1匹程度ということになります。
これを当院の来院数に当てはめていくと、およそ一年間に3〜4匹程度はこの病気のために来院してる計算になります。
先日、後ろ足の付け根あたりにできものができていると、連れてこられたのは16歳のおばあちゃんわんこでした。
見ると、こんなに大きな乳腺腫瘍ができていて、出血もしています。
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このままでは普段の生活に大きな支障を及ぼしますし、すでに貧血がでていました。
体もやせており、16歳という年齢を考えると全身麻酔による手術もリスクがありますが、何もしなければ長くても数ヶ月と判断しました。
そのことをお伝えし、ご家族で検討して頂いた結果、手術を決断されました。
術前の検査で予想以上に貧血していたため、急遽輸血を行うことにしました。
輸血といっても動物の場合、血液バンクなどはありません。なのでご近所で大型犬を飼っている方にお願いしてボランティアとしてご協力していただく必要があります。
幸い、1件目に連絡した方が快諾していただけたため、予定通り手術に臨むことができました。
注意深く麻酔をかけ、準備にかかります。
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改めてその大きさがお分かりいただけるでしょうか。
乳腺腫瘍の場合、本来は片側を全摘出し、できれば避妊手術を同時に行うのが理想的ですが、今回は貧血もあるため出血させたくないこと、手術時間を極力短くしたいこと、そしてなにより現時点のQOL(生活の質)の向上が第一の目的であることから、大きな腫瘍部分のみをとることにしました。
~後編に続く~